
Artist's commentary
淀みの催眠術師:カタバ・グラヴィティス
ズーズシャンクのもとには彼を愛称で「ズズ」と呼ぶカタバ・グラヴィティスという男がいる。
彼らはかつてアンヤと供に草獣たちの時代を生きた友情で結ばれていた。
彼はその体に移植させた草獣ミステリスの催眠と洗脳の力を持ち、
ズズの意志によって傀儡となるものを製造し、その工場に「活気」をもたらす。
ものを言わぬ労働力という奴隷を作るために彼の電気の禁術は重宝した。
もちろん、カタバはその行為を好んで行ったわけでもない。
正義は淀み続けても、それが希望となると信じて行った。
それも暗く狂った庭を浄化する願いを込めた祈りだった。
銃が不浄の雑音をかき消すことを願った。
カタバはハザマを去ったアンヤと同じく、病を患い、
それを克服するために肉体に女性性を補う液体を注射した。
生存するためには不必要だったが歪んでいて稚拙な考えのもと、カタバは更なる女性性を求めて大きな胸をとりつけた。
カタバは無意識にアンヤになろうとしていた。彼はハザマにとっての支えであるだけでなく、彼の友達それぞれの大きな支えだった。
そのころには小さな鳥族の女の子を養子に迎え、母のように可愛がっていたが
それも「アンヤならこうしただろう」という理想のもとでそれに倣っていただけだった。
どんなに努力しようとも組織全体の母親になることは叶わなかった。
時は過ぎ
ヨドミハザマの一員たち、彼らは暗い森の世界の終わりに正当なハザマの王アンヤによって解散させられたあとも、
残党は各地に散り、彼らに言わせれば「空をも支配する」破壊力を持った恐ろしい戦闘用の草獣クウラジュ(空羅樹)を製造し、草獣のまがいものから作られた「空の剣エッラ」と実験体の少年アズキを交わせ、
聖人トコヤミを幼児のように退行させ草獣のように従順に改造しシキトコヤミとした。
それもまた世界を不浄とし受け入れることが出来なかった故の浄化への願いの一つ一つだった。
淀みは知性の釜の中で渦巻いたが、それは確かな知性であっても澄んだ狂気だった。
確かにズーズシャンクとカタバによって受け継がれたものはあった。