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Artist's commentary
白夜、白海上空
1945,8月、改修された長距離飛行支援システムと傘体を装備し、
シュナウファー大尉はオラーシャ深部への超長距離夜間偵察任務を繰り返していた。
白海上空、五時方向、2キロ先に中型ネウロイの編隊を確認。
「さて…」
ハイデマリーは通常の「判断」をここで留保する。
良い話と悪い話がある。
前者はロマーニャの解放、後者はその立役者である501JFWの解散に伴い、同部隊発のラヂオも終了する事だ。
敵はまだこちらに気付いてはいない。
距離間隔を保ちつつ上昇。
マスクから送られる乾燥した大気と魔力の混合気は喉をひりつかせ、
白夜という状況は、身体に叩き込んだ航法感覚を漸次狂わせる。
扱い慣れたMG151が重い。
疲れているのだ。
東部戦線は今だ激しく、戦場はこの白夜のように時間が抜け落ち、疲労が疲労だけが連続している。
戦場での娯楽は少ない。その数少ない楽しみの一つが、
いやハイデマリーにとってはたった一つの精神の糧が終わろうとしていた。
心が正常であるはずがない。
今、交戦するのは危険だ。
幸いオラーシャ深部にあって無線は届かず、戦闘司令所の管制下ではない。
現任務のすべての判断は自分にある。
現状況に様々なファクターを出し入れし、空中夜間航空管制として自分がどう行動すべきかをシュミレートして、
その思考作業で精神から不安を押し出す。
航法地図を確認し、帰りの航路を算出。
「RTB」
彼女のささやき声はマスクの外壁に吐気と共に氷結した。