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Artist's commentary
Untitled
あの日、わたしは千束の秘密を知ってしまった。機械の心臓のこと、寿命が残り少ないこと、そしてこれから大きなテロが起こるということ。
あなたが羨ましかった。美しいあなたの助けになりたかった。隣に居たかった。
死に損ないのあなたと死に損なってしまったわたし。
溢れ出る命を震える手で抱えながら、最後の力を振り絞って塔を登る。
いた、千束だ。
やっとの思いで見つけた千束はもう以前のような明るさは鳴りを潜め、好奇心に溢れ活気づいていたかつての美しい真紅の目は潰れ、ただかろうじて浅い呼吸を繰り返すだけだった。
キスをする。
そのとき心のどこかでパキリと何かが割れる音が聞こえた気がした。
わたしは千束の傍に寄り添い、力の無い手を握った。
ひどく寒い。凍えそうだ。
二人で暖かいところへ行こう。南へ。ずっとずっと南へ行こう。
そこで、幸福の誓いを立てて生きよう。
これは、悲壮と博愛と自己犠牲の物語である。