Artist's commentary
デビルパーマーに出会ったせいで人生狂わされたから責任取ってほしい
これは小学生のころの思い出です。
秋、トレセン学園で行われる聖蹄祭に両親と行ったのですが、小さころの私は運動が不得手で正直なところ、ウマ娘のレースもさほど興味がありませんでした。
私はその日やっていたはずのテレビ番組を見られなかったことに不満で、楽しんでいたのは両親だけの状況に腹を立てて一人で前もよく見ずにうろついていたら、案の定迷子になってしまいました。
自分が迷子になったと分かってからは早いもので、私は泣きじゃくりながらあたりを彷徨いていたのを覚えています。
そんなとき、一人のウマ娘と出会いました。
当時の年齢からすれば彼女の方がずっとお姉さんでした。
お姉さんは悪魔の格好をしてお化け屋敷の宣伝をしていましたが、泣いている私を見つけると歩み寄ってきて、一緒に両親を探してくれると言ってくれました。
お姉さんは泣いている私を気遣って両親を探しながらでも、学園の色んなところを案内してくれました。
私がようやく泣き止んで、そしておそらく笑っていたのでしょう。
お姉さんは微笑んで「ほら、やっぱその顔が似合ってるよ」と言ってくれたのを覚えています。
その後、私は無事両親と合流することができ、お姉さんにお礼を言って別れました。
このとき、彼女の名前を聞いておけばよかったと後悔することになりました。
悪魔の格好をしていた彼女の、天使のような朗らかな微笑みを忘れることができないまま私は日々を過ごしました。
聖蹄祭から数ヶ月たった年末、私は両親に連れられ中山レース場に来ていました。
レースに詳しくない私でも、その日行われるレースがなんなのか、どのような意味を持つかは理解していました。
パドックの前は人でごった返していて、親が私を肩車して群衆の合間から顔をだすことができました。
レース場のアナウンサーが名前を読み上げ、解説役の人の淡々とした声がスピーカーから流れていました。
「2枠3番ーーーー」
アナウンサーの声とともに、パドックのカーテンが開いて一人のウマ娘が歩みだしました。
記憶の中で徐々に風化していっていた笑顔が、風になびく癖っ毛の茶色い髪を貫く流星が、しなやかで長い手足が重圧を物ともせずに前へと突き出される。
この日のことは、あまり覚えていません。今でも記憶の欠片が生み出した夢なんじゃないかと思うことがあります。
強いて覚えていることをあげるなら、彼女が勝ったということ、そして、彼女が「メジロパーマー」という最高の逃げウマ娘であるということです。