Artist's commentary
戦艦霧島
「……いよいよだね」 「はい提督」 「沖ノ島沖に遊弋する深海棲艦中核艦隊。我が艦隊が初めて大敗北を喫した敵。彼女らを倒すため、みんな猛訓練を積んできた。やれることは皆やった。あとはただ、戦うのみだ」 「………」 平静を装いながらもわずかに震える提督を肌で感じながら、霧島は思った。いつ終わるともしれないこの戦いで、いつか私も鉄底海峡の冷たい海底に還る日が来るかもしれない。でも、それは今日ではない。断じてない。あの敗北を招いた私を、今まで信じて使い続けてくれた提督。そして雪辱を果たすこの日、また私に座乗して将旗を掲げてくれた提督。この小さな温かいいのちを私の道連れにするなど、絶対あってはならない。だから私は勝つ。仲間たちのために。姉さまたちのために。そして何より愛しい、我が提督のために。 ■提督の不安をよそに、海戦は艦娘たちの一方的勝利に終わった。中核戦力を失った深海棲艦艦隊は総退却を開始、皇国のシーレーンを締め上げていた海上封鎖はついに破られた。そして今、提督たちの前に広大な外洋へ続く航路が開かれていた。本当の戦いが、これから始まろうとしていた。着任12週目ころのエピソード。