Artist's commentary
「穏乃ちゃん!」
「宮永さん!」「穏乃ちゃん、あのね」「どしたんですか?」「昨日衣ちゃんに嶺の上に花は咲くのか?とか言われたんだけど」「???」「嶺の上にも花は咲くってことを麻雀打つ前に証明したいんだよ」「はぁ、えっと、どうやって?」「私が穏乃ちゃんの上に乗れば良いんだよ」「え?」「けどそれじゃ穏乃ちゃんが潰れちゃうから私に穏乃ちゃんが乗れば良いの」「はい?」「だってほら私たち結構身長差あるし、私に乗っかった方が自然でしょ?穏乃ちゃんが重たい思いをしないで済むし、私は嶺の上にも花は咲くということが証明できて一石二鳥でしょ?」「いえ、それだと嶺の下に花が咲いてるんですけど……」「じゃあ穏乃ちゃんは潰れてもいいの?」「そんな、宮永さん背負ったくらいで潰れないですよ」「いいから乗ってよー」「えーと……宮永さんがそれで納得できるなら良いんですけど」「うん!」「よいしょ」「あはは、穏乃ちゃん気持ちいい幸せ……」「はい?」「それでさ」「えっ、はい?」「これで嶺の上にも花は咲くということが証明できたわけだけど、実際麻雀ではそれが可能かはまだ分からないよね」「そうですね」「だから次は麻雀で証明するために登山しない?」「え?何でですか?」「だって穏乃ちゃんは深山幽谷の化身でしょ?」「普通に人間なんですけど……天江さんの言葉真に受けすぎですよ」「いいからいいから、じゃあさくっと私の地元の飛騨行こうよ白馬岳」「いえ……きつくないですか?明日決勝戦なんですけど……無理ですよ」「でも穏乃ちゃんにとっては散歩感覚なんでしょ?」「勿論ですよ」「穏乃ちゃんが出来るんだもん、私だってやらないと明日勝てないもん」「宮永さん……」「……というわけで飛騨来たんだけど、穏乃ちゃんは準備いい?」「何で宮永さんまた私を背負うんですか?」「穏乃ちゃんは山歩きするとき誰かを背負ったりしてないでしょ?私は穏乃ちゃんを背負って山歩きするから私の方がすごい!」「はあ、無理しないでくださいね?というか宮永さんそんな格好で大丈夫なんですか?夏山とはいえ山は舐めない方がいいですよ」「穏乃ちゃんだってジャージ一丁でペラペラなスニーカーで駆けまわってるんでしょ?だったら私だって出来るもん」「私だから出来るんですよ」「なにその上から発言、ちょっと怒っちゃった」「ご、ごめんなさい」「それじゃあ歩くね?」「はい」「歩くね?」「はい、どうぞ」「歩くけど、ちょっといいかな?」「?はい」「私文系女子なんだけど」「はい」「だから山を歩くのってきついよね?」「はい」「しかも人ひとりおんぶして歩くんだよ?」「はい」「無理だよね?」「はい」「……」「宮永さん?」「けど、誰がどう考えても無理なのにそれをやろうと試みてるそのチャレンジ精神ってすごくない?」「はいすごいと思います」「かっこいいよね?」「はい」「これで私が山を歩いたら普通絶対惚れるよね?」「はい」「その勝ちに向けてただひたすらに真摯な気持ちって尊いよね?」「はい」「一歩踏み出すだけでも多分誰にも出来ることじゃないんじゃないかな?そう思わない?」「はい」「大事なのは山を踏破することじゃなくてそのはじめの一歩だよ。その一歩が全てだよね?そうでしょ穏乃ちゃん?」「はい」「それじゃさ、私が一歩踏み出したらそれで私の勝ちってことでいいよね?」「いえ、それはないんじゃないですか?」「あるもん!」「だったら私が宮永さんを背負って踏破しましょうか?」「それは穏乃ちゃんに負担が掛るからアンフェアだと思うよ?それで明日私が勝っても卑怯だしかっこわるいよ」「私なら大丈夫ですよ?」「けどほら、こういうのって先に実行した方が偉いからさ、だから私の方が強いよ」「まだ一歩も進んでないじゃないですか」「だからそれははじめの一歩の尊さを確認してたからであって」「じゃあ行きましょうよ」「もう、わかったよ」「はい、最初の一歩どうぞ」「うん……うん、ちょっと待ってね?」「はい?」「考えてみたら人を背負ったままうだうだ喋ってるとそれだけで体力消耗するよね?」「はい」「うん」「……歩けないんですか?」「うん」「宮永さん可愛いですね」「えへへ///」