
Artist's commentary
扶翼の巫女
多くの人達が年始に一年の吉凶を占うため引くおみくじ。
普通はその結果を見て一喜一憂するも科学的な根拠があるわけではないため深刻に悩む人など稀だろう。
あくまで精神的な作用を期待するもので良い運勢なら気持ちが上向きなり、悪い運勢なら気を引き締める程度だ。
だが、私の神社のおみくじは気味が悪いほど良く当たる。
だから最悪の凶運、大凶を引いてしまった者には代々受け継がれてきた巫女の力を使い厄を遠ざける。
その方法はまぐわい。
凶運の者が男性なら巫女はその男性と肌を重ね、もし女性ならその女性に近しい全ての男性と肌を重ねなければならない。
無論、私は何かの冗談だと思っていた。
何しろ生まれてこの方大凶などお目にかかったことがない。
きっとその存在と同様お祓いもとうに風化した風習なのだろう。
だがそれは大きな間違いだった。
その日、真っ青な顔で私の部屋を訪れた父は、御役目を果たしなさいと言った。
傍らで母が泣き崩れていた。
その背後にはおみくじを手に持った女性。
私はこれから自分の身に何が起こるかを確信した。