Artist's commentary
「シズー?」
「赤土さん、何ですか?」 「シズぅ」「な、何ですか?」「いやー、別に大したことじゃないんだけどさー?」「はい」「シズって、その……恋人いる?」「へ?いやいや、いるわけないじゃないですかー」「そ、そっか。まあシズの年ならまだいなくても別に普通だよね」「そうですよー。よく分かんないけど」「で、でさー、実は私もそういうのいないわけなんだけど」「え、うそ」「えっ?」「え、っと、何ていうか……すごいですね!」「何が凄いの?怒らないから聞かせてくれない?」「え?それだけ麻雀一筋なんですよね?何かかっこいいと思います!やっぱり赤土さんはすごいなー!」「え?そ、そう?えへへ///」「けど灼さんはどうなんですか?好きじゃないんですか?」「灼?灼はまあ、あと数年……最低でも高校卒業してからじゃないとアレかなと思ってね」「何だー、やっぱり相手いるんじゃないですかー!あはは、何で赤土さんそんなに悲観的になってるんですか?全然そんな必要ないのに」「う、うん。そうなんだけどさ……ところでシズ」「はい?何ですか?」「どうして私のこと赤土さんって呼んだり先生って呼んだりするの?」「へ?特に理由はないし先生って呼んだこともそんなに多くはないはずですけど……とりあえず気分で」「ふーん。さん付けもそうだけどさ、何か先生って付けるとさん付けよりも更に距離開いた感じするよね?」「そうですか?」「そうだよ。だから前みたくハルちゃんって呼んでみない?」「え、私ハルちゃんって呼んだことないですよ?それに無礼な気がするし……あ、いえ!灼さんが無礼とかじゃなくて、別に仲良しじゃないのにそんな呼び方はちょっと……」「え……」「はい?」「私、シズと仲良しじゃなかったの……?」「あ、いや、えっと、そうじゃなくて何かこう、二人の思い出的なものも特にないし……そこまで踏み込んだ仲じゃないっていうか」「踏み込んだよね?」「え?え?え、いつですか?」「前ベンチで二人きりの時を過ごしたよね?」「んーと、え?もしかして多治比さんの顔芸をスマホで二人で見た時のことですか?」「うん」「え……、確かに二人でしたけど……別に何のトキメキもない場面じゃなかったですか?」「そう?」「えーと、はい」「はは、シズは子供だね」「えっ?」「シズは多治比さんの顔芸に夢中だったみたいだけど、私はずっとシズを見つめていたよ?」「へ?」「例えばさ、恋人が携帯とかゲームとかに食いついている隣で寄り添いながら恋人を見守っている的なアレって結構あるじゃん?アレと一緒だと思うんだけど」「んー、そうですか?例えは分かるんですけど、私たちの場合そうでもないと思うんですけど……」「そうだよ」「えっと」「そうだよ」「……」「そうだよ、シズもそう思ったよね?」「……あ、……はい」「だよねー、あはは」「は、はは……って、ダメじゃないですか灼さんがいるのに!」「大丈夫だよ?」「何でですか!?」「バレなきゃいいじゃん?」「あ、赤土さんがそんな人だと思わなかったです……」「シズ、大人ってのは歳を重ねるごとに劣等感とか期待とか、欲望が強くなっていくんだよ……」「……けど、そんなの言い訳じゃないですか」「うん、言い訳だよ。灼の気持ちを知りつつ小鍛冶プロにうつつを抜かして望と付き合って別れてを繰り返して、今シズっていう心の拠り所を見つけたんだよ」「えーと……何ていうか、目移り激しいというか」「当たり前だよ……誰か一人なんて決心そうそうつかないよ」「え、いや、うん、でも」「少し付き合うと必ず飽きが来るからさ」「アンタ……」「けど!私だって知ってるよ、いつか一人を選ばないといけないことくらい」「……」「だから、シズ!私と結婚しよう!」「え」「私と結婚してください!プロになって滅茶苦茶頑張ってシズを幸せにするよ!本当はシズが小学生のころから何かいいなって思ってたんだよ!これは本当だから!だから私と結婚してください!」「えっと、ごめんなさい、まだそういうのよく分かりません」「だったらあと二年後に再プロポーズするから!お願い!見捨てないで!シズはまだ若いから余裕あるけど私にはそんなに悠長なことしてる暇ないんだよ!本当にお願いします!絶対に浮気とかしません!幸せな家庭を築きます!一緒に幸せになってください!」「いえ、灼さんでいいじゃないですか」「いや灼は何か浮気とか許してくれなさそうだし……」