Artist's commentary
スイッチ
”逆鱗”という触れてはならないものを表現する言葉がある。
では触れさせてはいけないものを何と言うのだろう。
友人の代わりに深夜のカラオケでアルバイトをしていた私は、
一人で訪れていたお客様の部屋へ注文されたビールを届けに行くことになった。
テーブルにビールを置く際、男が横目でこちらを見ている。
なんだろう、ひょっとしたら私を知っている人なのかな。
そう思いながらも間違っていたら恥ずかしいので営業スマイルをして踵を返した。
そのまま入り口へ進みドアノブへ手を掛ける。
突如全身に電流が走る。
手足が硬直し意識が朦朧とする。
いったい何が起こっているのだろう。
急病にでもなったのだろうか。
怯えながら自分の体に目を落とすとそこには、何故か男の手があった。
大きくて浅黒い手が衣服の上から私の乳房の先端を捻り上げている。
体温が一気に下がった気がした。
逃げなきゃ…でも体に力が入らない……。
恋人の君にだって触れられたことがないのに…。
私が無抵抗なのを良いことに今度は衣服の内側へ手が入って来る。
お腹から胸へ指が這い登り乳房へ巻き付きながら頂上を目指す。
再び電流が走る。
今度はさっきの比ではない。
四肢が痙攣し始め視界が明滅し、そして下腹部に熱が溜まりだす。
うそ…でしょ…。
無理やり触れられているのに、君という恋人がいるのに、経験なんて全くないのに…。
体が欲しがっている。
私はいったい何をしているのだろう。
気が付くと脱ぎ捨てられた衣服が散乱する部屋で中年男と向かい合っている。
もうブラすらつけていない。
恥ずかして悔しくて死にそうなのに、なんで私…。
早くここから出ないと取り返しの付かないことになってしまう。
だけどそう思う度に男の指が私の乳房に埋没する。
いやらしく練るような動きの指に、再び羞恥心や嫌悪感が霧散し欲求が肥大していく。
ついに私はパンティに指をかけてしまった。
顕になっていく秘所を男が凝視している。
唯一の抵抗なのか涙が溢れだす。
そして私は言ってしまった。
よろしく…お願い…します………。

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