Artist's commentary
お背中お流しします
その日、星野星愛はある任務に就いていた。
K温泉に宿泊する、京都市の装飾業A社の社長の接待だ。
近々A社とB社の間に、ある契約が交わされることになる。
B社と繋がりを持つ火宮衆は、その契約がより有利なものになるよう、A社の社長に術を以って働きかける。
そういう算段だ。
社長とB社の間では、一つの約束が為されている。
「この接待中、ある一定の線は越えてはならない」というものだ。
その約束を違えたならば、契約はB社有利のものとする。
火宮衆より使わされた星愛は、
B社の接待係として、社長の入る貸切風呂に入室する。
相手の腹積もりは、互いに承知している。
星愛は社長に一線を越えさせてやれば良い。しかし、心情的にそれが出来ない。
出来ないことを社長も察した。
湯の流れる音が絶え間なく響いている。浴室には張り詰めた空気が満ち満ちていた。
羞恥に耐えながら、何処まで出せばいいのかと惑う星愛。
欲望を抱きながら、駆け引きの程度を量る社長。
二人の歪な入浴が始まるのであった。