Artist's commentary
いつの間にか枯れてしまった結婚指輪を見て、衣玖さんは寂しい気持ちになりました。
そうして溜め息を付いている衣玖さんの手を、パチュリーさんがとりました。
「専門じゃないけれど、これくらいなら」そう言いいながらかけられた魔法で
衣玖さんの結婚指輪は、元の瑞々しさを取り戻しました。
「一生ものでしょう。大切にしなさい」
その優しさのおかげで、衣玖さんの結婚指輪は朽ちることのない永遠の愛の証となりました。
少し生活が落ち着いてきた折、衣玖さんが一人でいるときに咲夜さんと娘さんが訪れてきました。
妊婦、出産、育児生活。なんでも頼っていい、と言ってくれました。
会話の最中、常に瀟洒だと思っていた咲夜さんが、美鈴さんや娘さんの話題になるとこぼれるように微笑みました。
「あなたも、お幸せにね」咲夜さんが、見たこともないくらい優しい顔で言いました。
「おしあわせにねー!」咲夜さんそっくりの娘さんも、美鈴さんそっくりの声音で言いました。
その晩、衣玖さんは初めて勝負フンドシを締めたのですが。それはまた別のお話。
衣玖さんと名も無き妖精さん。
ふたりは驚くくらい暖かく、奇跡のように甘い日々を過ごしていました。
夢にまで見た結婚は、夢見た以上に幸せでした。
愛される悦びを知った衣玖さんは、同時に愛する悦びも知りました。
名も無き妖精さんのひたむきな愛に包まれて、
衣玖さんは確かに世界の全てに祝福されているのでした。