Artist's commentary
新宿店:バニー好きバニーさん、PM 10:30 バックヤード・休
限界だった。 新人のリアちゃんの、あの無防備な背中。 ホールに充満する熱気。 それらを浴び続けて、わたしの理性はとっくにショートしていた。
「……っ、はぁ……」
重たいドアを閉め、鍵もかけずに長ベンチへ倒れ込むように座る。 誰にも聞かれないよう、息を殺して熱い吐息を吐き出す。
(落ち着け……落ち着け、わたし……)
パイプ脚の安っぽいベンチ。 その固さが、火照った太腿には心地よかったけれど、座ったことで太腿同士が密着し、あの場所の湿り気が余計に意識されてしまう。
「ん、ぅ……」
ベンチの上で身体をよじる。 ヒールを履いた足がガクガクと震える。 わたしは背もたれのないベンチから、ずるずると重力に従って崩れ落ちた。 ドサリ、という鈍い音すら、今のわたしには心地いい。
(……床、つめたい)
そのまま、床に背中を預ける。 ベンチからずり落ちた恰好で、だらしなく脚を広げる。 ここなら、誰も見ていない。 わたしは震える指で、食い込んだTバックを横にずらした。
「……ふ、ぁ……っ」
声を出してはいけない。ここは職場だ。 けれど、指が濡れた突起に触れた瞬間、脳内でリアちゃんの弾けるような笑顔がフラッシュバックする。 あのお尻のライン。揺れる胸。 視界がチカチカする。
(ダメ、もう……すごい濡れ……)
天井の無機質な蛍光灯が滲んでいく。 カチ、カチ、と壁掛け時計の音だけが響く静寂の中で、わたしの指が立てる水音だけが、いやらしく耳に残る。
「んっ、くぅ……! ……っ、はぁ!」
口元を手で押さえ、必死に声を殺す。 けれど、快感の波は待ってくれない。 腰が勝手に跳ね、足の指が縮こまる。
(あー……いく…いっちゃ……ッ)
身体が弓なりになり、無言の絶頂を迎えた、その瞬間だった。
ガチャリ。
「藤宮さん、お先に休憩い……」
時が、止まった。 ドアが開き、廊下の光が差し込む。 そこに立っていたのは、これからの休憩に入ろうとした後輩バニーだった。
わたしの視界には、天井の蛍光灯。 そして、ドアの前に立ち尽くす後輩の、信じられないものを見るような目。
今のわたしは、どう見えているだろう。 ベンチから転げ落ち、床に這いつくばり、衣装は乱れ、股間に手を突っ込み、全身汗だくで、目はとろんと濁っている。 言い逃れようのない、現行犯。
けれど、わたしの口は、長年の社会人経験のせいで、脳の指令を待たずに勝手に「正解」の言葉を紡いでしまった。
「あ……」
「お… おつかれさまです…!」
とっさに、一番明るい、ハキハキとした声で挨拶をしてしまう。 まだ指は、濡れたアソコに触れたままなのに。
後輩が、引きつった顔で後ずさりする。
「あ、え、し、失礼しました……!」
バタン!
ドアが閉まる音が、静まり返った部屋に響いた。
「いや… えっと、これはー…」
誰もいない空間に向かって、わたしは力なく呟く。 弁解の余地など、どこにもなかった。
ただ一つ確かなのは、明日の全体ミーティングで顔を合わせるのが、死ぬほど気まずいということだけだ。

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