Artist's commentary
守矢神社社報・早苗さんコラム4-1
神職のつとめは、大きくいって二つあります。ひとつは「祭りをすること」、もうひとつは「神社を維持すること」で、私たちはこの二つのことに日々取り組んでいますが、その日常を知りたい、というご要望を多くいただいたので、簡単にお話しいたします。なにぶんモデルが私では、もっと立派な神職の方に恥ずかしいのですが、幻想郷には二社しかございませんので、僭越ながら私のとある一日をご紹介いたします。
神職の朝は、「日供祭(にっくさい)」から始まります。神様に朝の御食事を奉るお祭りで、だいたい日の出前後、遅くとも7時ごろの時刻に行います(神社ごとに決まっています)。神前に御食事を捧げ、祝詞を奏上し、氏子さんをはじめとするすべての人々が今日一日を神様のお陰によって無事に過ごせるよう、お祈りします。多くの神社ではお祭りの神饌のように(それより簡略化した)生のものを捧げますが、当社では、皆様ご存知の通り神様が姿をとっていらっしゃいますので、通常の御食事を奉ります。いちおう形が大切ですので、本殿にて八坂様に奉った後、一緒にいただくことになっています。守矢神社の祭神は八坂様で、洩矢様は厳密には祭神ではございませんので日供祭は八坂様と私で行うのですが、だからといって洩矢様の朝がちょっと遅いのはいかがなものか、と八坂様は仰っています(あとこれを書いとけ、と)。この写真も後ろのほうがあれなのですが、こっちへ来てからたるんどるので見せしめだ、と八坂様がお選びになりました。八坂様は厳しいお方です。
その後、参拝の方がいらっしゃる前に境内を掃除します。境内の清掃は「神社を維持する」ということの基本であり、「神職は一に掃除二に掃除、三四がなくて五に掃除」とよくいわれます。神様は清浄を好まれますし、参拝される方も、自然の中できれいに清掃された境内に神聖さを感じます。ですから、神社は常に清掃しなければいけません。
その後一息入れると、三々五々参拝の方がやって来られます。参拝してお札やお守りを受けて行かれる方、また様々な御祈願をされる方と様々で、その応対を行います。御祈願の場合は私が神前に祝詞を奏上して御祈祷を行います。多くは天狗さんや河童さんで、人間の私とは価値観の違うところも多いですが、失礼のないように応対するよう心がけています。
こちらへ来てからはそういった天狗さんや河童さん方が中心になって崇敬して下さり、神社を支えて下さっています。当社ではほかにも電力事業を行っていてその収入もありますが、基本的には氏子崇敬者の奉賛によってこの守矢神社を人的・経済的に支えていただいています。この形が神社のあるべき姿ですが、外の世界では地方の少子高齢化などによる氏子の減少によって神社が維持できなくなっている所も多くなっています。あちらでの当社もそのような感じでした。
天狗の社会は外の人間の世界とよく似ていますので、平日はわりと暇で、休日が忙しいというのは以前と同じですね。御祈願は皆さんだいたい午前中に済ませますので、午後はやや時間が空きます。この日は御祈願も入っていなかったので、朝食後に博麗神社へ掃除の手伝いに向かいました。
以下、次回に続きます。