Artist's commentary
結晶の花:カケラ
アマヤドリの傘の下に時々に現れるもの「雨(レーゲン)」から世界を守っている組織「キザハシ」の一員であるウガツ、アカヒゲは、カケラと呼ばれる物質を甘露結晶湖「プレジャー」の底から採取する。それは少女の姿で、強い結晶と草獣のエネルギーをもっていた。
ウガツは香りと味がわからなかったので、暖かさと冷たさが好きだった。友人であり兄弟であるアカヒゲの暖かい肌につつまれて眠るのがすきで、アカヒゲの歌で心を躍らせた。アカヒゲも片足がちょん切られていて今ある足がにせものだったのでウガツの下半身のうろこには仲間意識があった。
ウガツは甘い結晶湖、「プレジャー:幸福」と呼称される湖の底で綺麗な石で出来た花を見つけた。
泳いでいってそれを折って自分のものにした。花は白くて、縁が青緑と桃色に光っていた。長い根っこがそのままついていたがそれは尻尾のように長い。それは何かの結晶のカケラだろうとウガツは思ったので「カケラ」と呼ぶことにした。アカヒゲは泳げないのでカケラが湖の底で見せた美しさは地上に出た「彼女」の美しさと異なっていたのを知らないが、ウガツはカケラの色が退色するすることがわかった。
そしてどんどん死んだようになっていく。湖の水も、土も効果がなく、調査のために花を枯らすのかと悲しかった。
ウガツが産卵期に入り、意識も虚ろにベッドで横になっていると、花がどんどんと膨らみ、小さい人間のようになった。それは「草獣」で、弱ったからだを守るためエネルギーを草に保存していたものだった。
少女になったその草はウガツの無性卵をぱくぱくと食べだした。すると真っ白だった色がもどった。ウガツが産んだ卵を残らずカケラにやると、もっと欲しいというようにまとわりつくので、ウガツはしかたなく体液を与えた。するとカケラは腹の中で種子を作り、それを生んでウガツに与えた。それは夢のようで本当にあったことかウガツにはわからなかったが、花は確かに少女になり、彼の隣で眠っていた。
「それは大変だ。君は寄生されたかもしれない」アカヒゲは緊張してウガツの腹を撫でた。
その種子は赤い犬の胃を食い破り、木にするかもしれない。隻眼の王、父と同じように、木の体になってしまうかもしれない。そのいっぽうできょとんとした少女は美しい緑と赤にひかる髪の、鳥族の男を見つめている。明らかに敵意は無いようだ。
「カケラ、何かわかるかい」
「・・・わからない。でも話はわかる。ウガツはカケラと一緒になった」
「そうか・・ありがとう」
アカヒゲはウガツに向直ると言った。
「君の卵をカケラに食わせたら、彼女はいきいきとしたんだね。僕も君のように彼女を殺すことは選択肢でないと思う。
キザハシは・・・父と妹は、この花を調べたがっている、様子を見よう」
ウガツはときどき結晶の枝をはやすようになったが、ウガツに痛みが無い。
ウガツは痛みを吸われるようだというがその電気を帯びた枝が脳まで達していることがわかる。
敵対するソウハなる黒い結晶のものと、さらには「雨」そして雨に呼ばれた魚たちと対抗することができた。
アカヒゲの歌い鳥ゆえのその声帯から紡がれる歌は、ウガツの結晶の枝を折るが、ウガツはそれを望まない