Artist's commentary
学校で露出してたら二人に見つかりそうになり、苦肉の策に出た友利
正式タイトル:
能力を駆使しながら学校の校舎で露出行為を嗜んでいたが
廊下の角から乙坂と高城が現れ
パニックになりながらもやむなく高城にだけ能力を使い
苦肉の策に出た友利
放課後――
きっかけは何だっただろうか。
この時間になると条件反射のように気分が高揚するようになった。
生徒会室で、自然と荒くなる呼吸を整えながら、制服を、下着を、一枚ずつ脱いでいく。
ほどなく自らの恥ずかしい部分をすべて大気に晒し、髪留め以外のあらゆる衣類から放たれ、いわゆる全裸となった。
自分の体が熱くなっているのがわかる。
学校で裸でいるのを誰かに見つかったらアウト。至極当たり前のことである。
しかし今の友利は条理に楯突く。いや、楯突かざるを得ない衝動に縛り付けられている。
暴れる心音を聞きながら、友利は生徒会室の扉に手をかけ、ゆっくりと押す。
そして扉の間から廊下を伺い、慎重に一歩を踏み出す。
――大丈夫。自分には他人から視認されない能力がある。
当然その能力は完全なものではない。視認されなくなる相手は同時に一人だけ。
いくら人通りの少ない時間・場所であったとしても、同時に二人以上に出くわす可能性は決してゼロではない。
今は誰もいない廊下を、何度も何度も見回しながら進む。
廊下の床が素足に冷たい。
風が何物にも遮られることなく全身をくすぐる。
廊下の窓から差し込む夕陽に、ごく日常の風景の中で、自分のあられもない肢体が照らされる。
自分が置かれているこの異常事態に、まるで脳に甘いアルコールを注がれるような得も言われぬ感覚に身を預ける。
耳を澄ませば遠くから部活の声。
そして…それに混じり足音が聞こえてくる。
一人分の足音。前方の角から誰かがこっちに来る。
大丈夫、角から現れた瞬間に能力を…………発動!
前から現れた男子生徒は、こちらに進路を向け、表情を変えることなくそのままこちらに向かって歩いてくる。
視線の先には全裸の友利がいる。確実に彼の視野に自分が入っている。
能力により友利の姿は視認されていない。いないが、友利は声を出さないでいるのがやっとだった。
口を押さえる。足が震える。
すると今度は後方から足音。後方の角から誰かが現れる。
このままでは前後から挟まれる形になる!
二人同時には能力は使えない!
友利は足音を立てないようダッシュして男子生徒とすれ違い、直後に後方の角から現れた女子生徒に能力の対象を移す。
――今のは危なかった…!
男子生徒の背後で早鐘のように高鳴る胸を押さえる。荒い呼吸が聞こえないよう口を押さえる。
今男子生徒が振り返ると裸が見られてしまう。
この場は早く離れよう。
男子生徒に気づかれないことを祈りながら、前方の角へと急ぐ。
角の先は階段だ。誰も居ないことを確認しながら友利は階段を降りる。
――今日は自分の教室まで行ってみよう。
そう目標を決めると慎重に歩を進め、自分の教室のある廊下までたどり着いた。
前方の角から男子生徒が現れたが、能力により視界から姿を消す。もう慣れたものだ。
しかし、同じ角から、さらに別の足音が近づいているのがわかった。
何度も言うが、同時に二人にこの能力は使えない。
ダッシュで目の前の男子生徒とすれ違い、彼の視野から外れた所で能力を解除。
次に角から現れる人物に能力を……発動!
それは高城だった。
それと……乙坂。
何度も言うが、同時に二人にこの能力は使えない。
複数の足音が重なって、角の向こうから聞こえる足音が二人分だと気づかなかった。
そんな後悔をする暇もなく。
咄嗟に隠れる所もなく。
生まれてから経験したこともないようなほど頭が真っ白になり。
もうこうするしかなかった。
――ああ。これからどうなっちゃうんだろう。
――どうして有宇君を選んじゃったのかな。