Artist's commentary
依子
2015/2/15 02:20
頬が燃えるように熱い。
あの温厚な父が俺を殴るなんて…。
痛みなんかどうでも良くなるくらいショックだった。
隣にいる依子は地面へ額を擦り付け身を震わせている。
彼女がこんなにも必死なのに話も聞かないつもりなのか。
父が拒絶する理由はおおよそ察しがつく。
依子が俺より一回り年上でバツイチだからだ。
親という生き物は子の結婚相手に年齢の離れた年長者や離婚歴のある者を好まない傾向にある。
現実問題として年齢は老後の心配、離婚歴は配偶者としての資質に疑問の余地があると考えられるからだ。
自分の親ならちゃんと話をすれば依子の事を気に入ってくれると考えていただけに、
突然の一撃はまさに青天の霹靂というやつだった。
依子の人柄に触れもせず、俺の自由意志も踏みにじって一方的に自分の理想を押し付けるつもりか。
そう考えると徐々に頭へ血が登り始める。
そんな俺に父はさっきと同じ言葉を繰り返した。
「何をやっているんだ!」
若干殺意のこもった目で父を睨みつける。
俺は依子と結婚する、それだけだクソオヤジ。
喉元まで迫り上がる言葉。
だが、結局それは口から放たれることはなかった。
「自分の嫁さんが土下座しているのにお前は何も感じないのか!
嫁さんにこんな事をさせる男がまともな家庭を築けると思っているのか!」
またも青天の霹靂。
どうやら今日は天気が変わりやすいらしい。
一瞬固まった後、慌てて玄関でひれ伏す依子を立たせ額についた汚れを拭う。
俺は父を見損なっていたようだ。
こう言っては悪いが頼りない父だと思っていた。
家の中ではあまり主張せずどちらかというと空気のような存在に感じていた。
だが今は違う。
圧倒的なまでに巨大な存在。
ずっと母や俺を守るため水面下で戦い続けて来た男は、
俺の情けない姿を見てついにその浩々たる姿を浮上させたのだ。
この人のようになれるだろうか。
俺はその時初めて家庭を持つということの本当の意味を知った。
俺との結婚を快諾された依子はいつにも増して情熱的だった。
柔らかな髪が宙に舞い、大きな乳房が爆ぜるように揺れ、厚みのある尻が勢い良くぶつかって来る。
彼女が跳ね上がる度に吸い上げられるような感覚。
そして降りてくる度にうねるような肉壁をかき分け最奥の部屋の扉へ衝突、抉じ開ける感覚。
まだ始まってからそれ程経っていないというのにもう吐き出してしまいそうだ。
やむを得ず依子の腰を捕まえ奥を削るように腰を揺らす。
依子がたまらずイヤイヤと頭を左右に振る。
ずいぶんと奥の入り口が降りてきているため、ほとんど先端は奥へ入れることが出来た。
その上で依子の乗っている場所を前後左右へ傾ける。
すぐに依子の四肢がガクガクと震え始める。
それを見て再び突き上げを開始した。
落ちるような感覚を味わっているのか何かを掴もうとしている依子の手をしっかりと握る。
力強く依子を打ち上げ、降りてくるのを下で待ち構える。
最長のストロークから徐々にお互いの手を引っ張るようにして小刻みな動きへと変えてゆく。
依子が動物めいた悲鳴を上げる。
もう限界だ。
覆い被さって来る依子の尻に指を食い込ませアーチ状になるくらい背中をしならせる。
依子の開いた脚が宙へ浮き上がる。
この体勢から逆立ちでもしようとしているかのように二人の腰が高く上がっている。
そして閃光が走り、意識は漂白された。
今まで味わったことのない大きな快感。
まるで放尿でもしているかのような量が依子へ向かって流れて行くのを感じる。
依子は俺の肩口に歯を立てたまま意識を失っていた。
どうやら俺も彼女と一緒になれることが嬉しくて歯止めが聞かなくなってしまっていたようだ。
俺は彼女を「おばさん」から「依子」と呼ぶようになった。
依子は俺を「ヒロアキ君」から「ヒロアキさん」と呼ぶようになった。
俺達がお互いの呼び方を変えたのは結婚を意識してからだ。
だからだろうか。
結婚してしばらく経った今でもたまに妻のことを誤って「おばさん」と呼んでしまうことがある。
全くなんて無神経な男なんだ…。
だけどそんな時、いつも依子は怒るどころか嬉しそうに微笑み返してくれるんだ。