Artist's commentary
泊地水鬼
泊地水鬼は海戦に敗北した。艤装を破壊され有力な味方を沈められた彼女に、敵を押し止める力はもう残っていなかった。それを承知した敵艦隊は、彼女を無視する形で西方へ進撃していった。既に戦いの焦点はステビア海へ移ったのだ。だがそれも激しい戦闘の後味方の艦隊が壊滅したとの報を機に急速に活動は低下していった。それでも敵艦隊は時折来襲しては環礁沖を通過して行ったが(どうやら西方から来た味方を探していたらしい)、それもある日を境にぴたりとなくなった。
泊地水鬼は悟った。攻勢が終了したのだ。事実奪われていたリランカ島に敵影は無く敵主力の根拠地帰投が確認された。敵の資源輸送が活発化し、敵潜のオリョール海哨戒も再開した。何もかもが日常に戻って行った。終わったのだ。嵐のような3週間が、ようやく終わったのだ。アンズ環礁は元の静けさを取り戻した。運命の悪戯で戦場となった誰も知らない泊地は、元どおり皆の記憶から忘れら去られていった(もっとも味方補給艦は頻繁にやって来たが。司令部はまだ彼女を廃棄するつもりはないらしかった)。しかしその意味を考える間もなく、泊地水鬼は眠りについた。とにかく疲れていたのだ。環礁の暖かな海にたゆたいながら、あのとき見た、“おおきなつばさ”の夢が見られたらいいな、と思いながら、彼女は深い眠りに落ちていった。
■「発令!第十一号作戦」参加を記念して。お疲れ様、お休みなさい。