Artist's commentary
戦艦タ級の鹵獲(研究番号タ-50098)
「は、班長!こんなことをしてていいのでありますか僕らは!」
「馬鹿者!今は部長と呼ぶんだ!いいな?」
組織としては鎮守府付きの厳正な研究機関であっても、そこで働く人材の変態性は様々である。深海棲艦の調査研究という特殊な分野へわざわざ志望してくる者というのは、やはりそれなりに特殊な想い…いや大いなる妄想を抱いている傾向が強い。とはいえ、研究員として採用されるにはそれなりの選抜を受けているわけで、優秀な能力と天秤にかけて多少の変態的人間性には目を瞑るというのが上層部の考えである。
戦艦タ級の鹵獲数は鹵獲される深海棲艦の中では少ない方であり、これまでに鹵獲されてきたタ級に大破を免れた個体もほとんどいなかったため、タ級の調査研究は各研究班と比べてもかなり遅い進展を見せていた。
「しかし…まさか俺達が抜擢されるとは思わなかったな。優秀な奴は他に何人もいたが」
「そうは言いますけど、いちばんブ厚い嘆願書を書いたのは班ちょ…部長ではなかったですか?」
「そりゃあお前、セーラー服だぞ? 本気にもなる」
「そうですね。セーラー服ですからね」
青春の学生時代を男子校で過ごした彼らには、セーラー服姿のタ級が敵ながら女神のように見えたらしく、その純朴さがこの特務にはむしろ有効であろうという異例の判断が下され今に至っている。
研究開始からすでに1週間が過ぎ、研究と称する彼らの対応は未だ変態的行動に集約されがちではあったが、決して乱暴な行為に及ばずタ級を労るように調査を重ねている彼らに対し、タ級から観測されるデータは明らかに緊張度合いの減少を示し始めている。これならば、近日中に調査研究は次の段階へ進むことが期待できる。タ級と彼らの心的距離感がゼロになるのは時間の問題であろう。
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