Artist's commentary
思ったより乙女な長門につい絆されてしまう提督マジチョロイ
まさか彼女にまでそんな目で見られているとは思わなかった。唇に感じる温もりを確かめながら、そんな埒も無い事を考える。
凛々しく猛々しく、確かな実力に裏付けされた誇り高い厳格な姿勢。か弱い女性達の中で、皆に頼られる一際男性的な人だと思っていた。
だけど。
引き寄せる手は強引で、首に回された手も力強かったけれど。
熱に揺れ惑う瞳は、懇願するように弱々しくて。触れた唇は微かに震えていて。
らしくない。なんて、少々気の抜けた事が頭を過ぎった。
そして彼女自身もそれを理解しているのであろう。強張った身体が其れを教えてくれる。
自己を厳しく律せねばならぬ筈なのに、色欲に流されてしまっている己を恥じているのだ。
その責任感は、確かに私が信頼する彼女の姿だった。
しかし、だからこそ動かない。名残惜しげに離れた唇から熱い吐息を漏らすだけで。
伏し目がちに窺いながら、時折もどかしげに口を開きかげるがカタチになる事適わず。
今まで感じた事の無い理性と感情の差異を持て余しているのだ。果たして、それがどれ程の苦しみであるか知り得る事は出来ない。
だけど私には、そんな彼女がどうしようもなく愛おしく思えたから。
その苦しみを癒すように、最大限の慈しみを込めて頬に手を添える。すると彼女は一瞬驚いたように私を見上げた。
そう。長身の彼女が見上げる事が出来るのは、今の鎮守府では私だけだろう。
誰からも見上げられ、頼られる存在だった彼女。否応無く心身の強さを求められ、そしてそれに答えられる程の能力を持っているが故に。
首に回された手は力強くも、こんなにもか細いのに。鍛えられた身体は頑強であれど、こんなにも柔らかいのに。
それを知ってしまった。気付いてしまった。
いや、きっと彼女は誰かに気付いて欲しかったのであろう。そんな自分を知って欲しかったのであろう。
だから私は。そうすべきだと思ったから。そうしたいと思ったから。
まるで赤子のように。愛し子のように。
その額に、そっと口付けを落とした。
甘えてくれていいんだ。頼ってくれていいんだ。今だけは、私だけは。
そんな君がとても貴く、大切に思えるよ。
言葉に出来ないそんな想いを伝えたくて。彼女の全てを受け入れてあげたくて。
この胸に抱いた彼女が、幸せであるように。
そんな私の真摯なる祈りと願い。艶やかな黒髪を指で梳きながら、優しく優しく微笑んだ。
対する彼女の答えは、紛れも無い歓喜と安堵。
恐る恐る受身に引き寄せるのではなくて、己の全てを委ねるように覆い被さる口付け。
口内を舐る舌も、服の下を弄る手も、強引ではあるけれど。
相手を支配し、屈服させる為のものではなく。寧ろそうされる事を望んでいる様にさえ思える、彼女の全てを乗せた愛情表現。
荒い呼吸と粘膜の擦れる音だけが支配する空間。
上滑りする言葉など必要ない。この指が、唇が全てを伝えてくれるから。
際限なく高まる熱が理性を溶かしてゆく。
最早お互い、引き返す事など出来そうに無かった―――――