Artist's commentary
欲望の雨
2013/1/5 02:12
帝国の各領地で不穏な気配が漂っていた。先日、国境にある領地で民衆が蜂起し領主が殺害されたことを受け帝国軍は鎮圧部隊を派遣したが、民衆は隣接するアグノート王国の軍を呼び込んでこの鎮圧部隊を撃退するという事態が起こった。帝国とアグノート王国は数年前から国交断絶の敵対国になっているため、外交的な手段でアグノートの干渉を止めることは出来ず、圧政の敷かれた他の領地の民衆が追随的に蜂起する可能性が日々高まっている。帝国参謀の背筋に冷たいものが伝う。もし仮にアグノートが水面下で不満を持った民衆たちと繋がり一斉蜂起を示唆したらどうなるだろうか。帝国軍がいかに大軍を有しているとはいえ全領民の数に比べれば微々たるものだ。領地の大半は帝国の民衆自身に占領され、政治的な部分は善政を敷くアグノートに抑えられてしまう可能性すらある。もはや軍事的な手段のみでは収拾がつけられなくなっているのではないだろうか。だが私はただの一参謀で政治的な権限などほとんどない。支配者たちの民衆に対する一方的な搾取を止める術はない。とは言えまだ手はある。すでに進発させておいた軍は今頃民衆に占領された領地も含めアグノート国境付近を包囲しているだろう。来週には占領地を奪還すべく大軍が差し向けられることになっている。そうなればアグノート軍は自国を囲む要塞から出撃して占領地の民衆を守らなければならない。今回ばかりはあの白髪将軍であっても占領地を放棄して要塞へ撤退するしかないだろう。要はそうなるまでの間アグノートや占領地の民衆が他の領民と結束するのを阻止すれば良いのだ。一斉ではなく段階的な民衆蜂起ならまだやりようはある。だが私の思惑とは裏腹に事態は更に悪化した。帝国における軍の腐敗は著しく進んでおり兵士たちの綱紀の低下は参謀の想像を凌駕していた。進発した軍の兵士たちには人や物の流通を監視するよう言い渡しておいたのだが、兵士の一部が占領地近くの領地へ行商に訪れた女商人を不審人物として捕らえ身体検査と称して衣服を脱ぐよう強要したのだ。さらにその躰を見て興奮した兵士は女を後ろ手に縛って将官が兵士を激励するために設けられた台の上へ連れて行った。周りに大勢の兵士たちが装備を外し集まって来る。台の上の男が豊かに実った乳房を両手で挟み込み、ぴっちりと合わさったその割れ目へ一物を刺し入れた。彼らはもう兵士ではなく愚かな盗賊に成り果てていた…。