Artist's commentary
人ならざる者
2013/8/25 00:51
ガラガラ…。車輪の付いた棺を馬車が牽引して走っている。まただ…。今回棺の上に固定されているのは鍛冶屋の一人娘だ。領主様の息子が棺の上で腰を振りながら娘の尻を叩いている。彼は狂っているわけではない。当然の権利として行っているのだ。特権階級に生まれた者は得てして倫理や道徳が身に付かない。獣と何ら変わらないのだ。民衆からの視線を浴び”坊ちゃん”が悦に浸っている。何故我々はこのような醜悪な存在に命や尊厳を委ねなければならないのか…。棺の上の娘が泣き叫ぶ。5年前同じ目に合った一番上の娘の事を思い出す。あの時私はこの獣に襲い掛かろうとしたが友人たちがそれを止めた。もし”坊ちゃん”に危害を加えたりすれば一族郎党皆殺しだ。友人たちには感謝すべきなのかもしれないが未だそんな気持ちになれない。”坊ちゃん”が民衆の集まる真ん中で馬車を止めさせた。ギシギシッ…。本格的に腰を振り始める。どうやら彼は娘に種付けする瞬間を大勢に見てもらいたいらしい。民衆の中に何名かの護衛が混ざる。こんな男を守っているのかと思うと反吐が出る。パンパンパンパンッ。肉が肉を打つ音が響き渡る。終わりは近い…。棺が大きく揺れ”坊ちゃん”の背中が弓なりになる。私は悍ましい光景を見まいと手で顔を覆った。悲鳴が上がる。娘の声ではない。さらに歓声が沸き起こった。異様な雰囲気に恐る恐る手を退ける…。”坊ちゃん”と娘の連結部が切断されていた。繋がりを断ったのは本来”坊ちゃん”を守るはずの護衛の兵士。彼らも限界だったのだ。人ならざる者の支配に…。自慢の一物を根元から落とされた”坊ちゃん”が痛みに蹲る。護衛の一人が鍛冶屋の娘を開放し剣を手渡す。「君がそうしたいならそうすればいい」 娘は迷わず剣を取り”坊ちゃん”に歩み寄った。鍛冶屋の娘だけあって刃物の扱いには慣れているらしく、娘は命乞いする”坊ちゃん”の頭を一振りで両断した。…あれから我々は領主様を倒して隣の小国に助けを乞い、白髪の将軍と供に帝国本土の鎮圧部隊を撃退した。