Artist's commentary
まぎか 【休憩は終わりだ、ほむら…行くぞ】
予想通り、カザフは寒かった。横殴りに襲ってくる雪粒の遙か高みは、幾重にも折り重なる厚い雲に覆われた灰色の空。ジョン・マクタビッシュ大尉は残り少なくなったチェスターフィールド煙草の紫煙で肺胞を満たしつつ、傍らの「相棒」に視線を向けた。少女は出発前に(正体不明のSF銃の代わりに)無理矢理宛がわれたM14ライフルを抱えたまま、茫漠とした視線を峨々たる丘陵線に向けていた。きっと「約束を交わした友人」の事を思い出しているのだろう。「強くなりたいから」といって何の因果で自殺願望者の集いめいた戦士の集団(TF141)などに首を突っ込んでしまったのか…。友人の為に銃を取った決意の硬さは認めよう。だが、過ぎ去った時間は戻せないのだ…一端、修羅の道に足を踏み入れてしまえば、もう後戻りは出来ない…しかし、少女は険しき道を自ら選んだのだ。これ以上は、マクタビッシュにもとやかくは言えない。経験を積んだ戦士のみが持ちえる沸点の低い憐憫と、不器用だが深い優しさが綯い交ぜに浮かぶ瞳を少女に向けた後、ジョン ”ソープ” マクタビッシュ英国第22連隊特務大尉(出向中)が、白々とした明るさと、冬夜の暗さの中間をたゆたう空へと双眸を振った瞬間、目的地の敵軍事基地のターマックから飛び立っていくSu-27戦闘機の轟音が世界を満たした。哨戒パトロールの交代時間…つまり、大尉と少女の「潜入」の時間がやってきたのだ。マクタビッシュはチェスターフィールドを虚空に投げ捨てると、少女に告げた。「休憩は終わりだ、ほむら…行くぞ」「え?」やっと深い夢想から覚めた少女は、上官の落ち着いた視線に気がついた。「オスカー・マイクだ(移動を開始する)」 そう静かに告げるなり、マクタビッシュは手にした消音装備のライフルの装弾レバーを引いた。少女も慌ててM14のレバーを引き、心音センサーパネルを展開させる。落下した衛星モジュールの奪回作戦がついに始まるのだ。暁美ほむらはマクタビッシュ大尉と共に、戦闘機の轟音が雷鳴のように響き渡る雪山の頭頂部へとステルス行軍を再開した……。 (以前に描いたメガほむ+CODネタにつけていただいた追加タグが面白かったので、つい悪のりしてしまいましたw 生真面目なほむらは、きっと大尉に言われたとおりに10枚くらいタイツ履いてますです。前話については〈まぎか 【交わした約束、忘れないよ】〉をご笑覧くださいませ~)