Artist's commentary
飛鳥のエイリアン?2-1
『日本書紀』推古天皇二十七年(616)四月四日条:
近江国が、「蒲生川に不思議なものが浮かび、形は人のようにも見える」と言上した。
『聖徳太子伝暦』推古天皇二十七年条より:
・・・それから近江へ越えてゆかれ、志賀・栗本等の諸郡・諸寺を巡見し終えられると、粟津に留まられた。
(太子は)左右の者に語って、
「わが死の五十年後、一人の帝王があって、この所に都を遷し、十年の間国を治めるだろう」
と仰せになった。
この時近江国司が、
「蒲生河に物があり、その形は人のようで人でなく、魚のようで魚ではありません」
と申し上げた。
太子は左右の者に語って、
「これは禍のはじめである。人魚は瑞物ではない。
今、飛菟(*聖王のたとえ)がいないというのに人魚が出るというのは、これは国に禍をなすものである。
汝らはよく覚えておくがよい」
と仰せになった・・・
布都「よく調べてみたのですが、人によっててんでばらばらの事を言っていて、なにがなんだかわかりません。
上が魚で下が人間だったり、白くて黒い斑点のあるくねくねした化け物だったり・・・
『いあいあ』とか『ふんぐるいむぐるうなふ』云々とか、わけのわからないことを口走ったりもしているそうです。
国の災いになるのならば、早く誅殺すべきでは・・・!」
神子「(・・・今までは適当に瑞祥扱いして大目に見てきましたが、われらもそろそろここから去らねばなりませんし、
のちのちのためにもここで懲らしめておかねばなりませんか・・・)わかりました。その“もの”を捕えなさい」
布都「はい!」
神子「ああ、そなただけでは手に負えないでしょう」
布都「ガーン!」
神子「それは水中に現れるようですから、石上(いそのかみ)だけでは手に余るでしょう。
大がかりになれば神宮を斎(いつ)き奉るそなたの従弟も困るでしょうし。
住吉(すみのえ)や山背鴨(やましろかも)などの力も借りるのです」
布都「は、はい・・・(しょぼーん)」
神子「そなたが労(いたづ)くことはありませんよ。われらにははかりごとがあるのですから」
布都「そ、そうですね!ありがとうございます!では山背鴨と住吉に駅馬(はゆま)を立てましょう!」
神子「(やれやれ・・・いつまで経っても童みたいですね。元気なのはいい事ですが)」
*続きました
*推古27年のSAN値チェック。
*アンケート結果とはいえ、こんな名状しがたいものが出てきたらどうしたらいいのか。
*「従弟」は物部恵佐古連(もののべのえさこのむらじ)を漠然とイメージ。
推古天皇治世において石上神宮を斎き奉ったと『先代旧事本紀』天孫本紀に記されています。
ちなみに推古天皇治世三人目で、先代は蘇我馬子に嫁いだ従姉(父の兄の子)の鎌姫様。
こうしてみると推古天皇はこの時代ではずいぶんな長寿でいらっしゃった。
のちの所伝では百年生きられたとされているのもむべなるかな。
*住吉は摂津難波の住吉大社、山背鴨は京都(このころはまだ京じゃないけど)の上下賀茂社。
水に縁の深いお強い神様ですので、こういう場面ではお声がかかるかも、ということで。
*『日本書紀』によればこの三か月後の7月にこの「モノ」が捕まった、ということで、もうちょっとだけ続くんじゃ